<あらすじ>栄華を極めた全盛期を過ぎ去り、家族も、金も、名声をも失った元人気プロレスラー“ザ・ラム”ことランディ。今はどさ回りの興行とスーパーのアルバイトでしのぐ生活だ。ある日心臓発作を起こして医師から引退を勧告された彼は、今の自分には行く場所もなければ頼る人もいないことに気付く。新しい仕事に就き、疎遠だった娘との関係を修復し、なじみのストリッパーに心の拠り所を求めるランディ。しかしその全てにつまづいた時、彼は悟る、例え命を危険にさらすことになっても、自分はプロレスラー“ザ・ラム”としか生きることが出来ない男なのだと。。。
惨めです。
かっこ悪いです。
みすぼらしいです。
観ているほうが泣きたくなります。
過去の栄光にすがっています。
老骨に鞭打ってます。
全身ガタガタです。
無理してます。
汚いケツにステロイドを打ちながら試合してます。
ギャラは雀の涙です。
家賃も払えないです。
もう・・もう勘弁してくれ・・
とても画面を直視できません。
あまりの惨状に手が勝手にリモコンに伸びます。
もう嫌だ。
早く楽になりたい。
一刻も早く停止ボタンを押して次の行動に移りたい。
いつの間にか僕の背後にぶよぶよの身体のジジイが立っています。
ジジイの口がこう動いた気がします。
「目を逸らすな」
・・僕にも闘えと?
「見ることもまた、闘いだ」
それはスロットでボーナス中にトキが言う台詞だけど。
僕は歯を食いしばって闘いを続行します。
サイン会は閑散としてます。
心臓が悪くなってプロレスを辞めろと医者に言われた途端に弱気になって、昔に愛層をつかされて出て行った娘に会いに行き、媚を売ります。
娘のご機嫌を取るためにダサい服を必死で選んでプレゼントします。
子持ちの中年ストリッパーに嫉妬して暴言を吐きます。
バイト先のスーパーの総菜売り場で、些細なことで癇癪を起して、血まみれで暴れて客をドン引きさせます。
もう・・許してください・・
震える手で停止ボタンを押そうとすると、僕の手をジジイが押さえつけます。
「これが生きるってことだ」
惨めなジジイはもう引退すると言ってたのに、娘やストリッパーから拒絶されて、全てがどうでもよくなったというヤケクソな理由だけで試合に復帰を決めます。
惨めさがMAXになったとき、僕の胸の痛みとともに色んな想いが曼荼羅のように流れ込んできました。
惨めだから何だ?
かっこ悪いから何だ?
何をもって勝った負けたとするんだ?
八百長だから何だ?
打合せしてるから何だ?
筋肉を作ってるから何だ?
おまえの人生はダサくないのか?
おまえは闘ってるのか?
うおおおおおおおおおおおおおおおおおお(血の涙)
惨めな片足の犬っころでも飯を食うために何かをしなきゃならないんだ。
誰が何をほざこうがここがおれの居場所なんだ。
おれはここでしか生きられないんだ。
はがああああああああああああああああ(号泣)
そして惨めなジジイは最高に輝きながらこう言い残して消えていきました。
「おまえには輝ける場所があるのか?」
エンドロールでブルーススプリングスティーンの曲が流れるときに僕の眼から涙が駄々洩れになっていました。
☆5